クルーズ業界のSDGs達成に向けた取り組み

クルーズ業界は、環境保護、社会貢献、経済成長など、SDGsの達成に積極的に貢献しています。 

 

環境保護への取り組み 

二酸化炭素排出削減 

気候変動の抑制は、クルーズ業界にとって重要な課題です。クルーズライン国際協会(CLIA)は、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ・カーボン・クルーズ」を掲げ、2035年までにすべての客船を陸上電源対応にすることを目指しています。 カーニバル・コーポレーション、ロイヤル・カリビアン・グループなど主要クルーズ会社も、この目標達成に向けたロードマップを策定し、持続可能なクルーズの実現に取り組んでいます。 

 

LNG燃料船の導入 

液化天然ガス(LNG)を燃料とする船舶は、従来の重油燃料船に比べ、排気ガス中の窒素酸化物を約8割削減できるため、注目されています。 また、硫黄酸化物の排出もほぼゼロに抑えられます。アイーダ・クルーズ、コスタ・グループなどがLNG燃料船を導入するなど、環境に優しいクルーズ船の普及が進んでいます。 

陸上電源対応の推進 

391-01-陸上電源

陸上電源対応の設備を備えたクルーズ船は、停泊中に陸上から電力供給を受けることで、船舶のエンジンを停止し、排出ガスを削減することができます。 プリンセス・クルーズは2001年から陸上電源対応を開始しており、横浜港などでも陸上電源設備の整備が進められています。 CLIAは2035年までに全船舶に陸上電源対応を求めており、クルーズ業界全体の環境負荷軽減に向けた取り組みが加速しています。 

環境保全プログラムの導入 

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プリンセス・クルーズは、「プラネット・プリンセス」という環境保全プログラムを導入し、乗務員や乗客に環境保護を呼びかけています。 高度な空気品質システム(EGCS)の導入や、陸上電力供給システムの利用によるディーゼルエンジン停止など、大気汚染削減に向けた多角的な取り組みを行っています。 

写真引用:プリンセスクルーズ

https://www.princesscruises.jp/environmental-responsibility/

 

参照記事:株式会社カーニバル・ジャパン 

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000191.000012778.html

水素燃料船の開発 

水素燃料船は、ゼロエミッションを実現する次世代の船舶として期待されています。MSCクルーズが水素燃料客船の開発を進めており、2020年代後半には登場すると予想されています。 ロイヤル・カリビアン・グループ(RCL)も、2035年までに温室効果ガスを出さない「ゼロ・エミッション・シップ」の就航を目指しています。水素燃料船は、クルーズ業界の持続可能な未来を支える重要な技術となるでしょう。 

https://www.cnn.co.jp/travel/35201474.html

社会貢献への取り組み 

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ジェンダー平等の推進 

クルーズグループは、女性の社会進出を支援するため、短時間正社員制度や育児手当を導入し、働く女性や子育て世代を応援しています。 

安全な水と衛生の確保 

クルーズグループは、公衆トイレの清掃や水質検査を定期的に行い、安全な水と衛生の確保にも取り組んでいます。 

地域経済への貢献 

A global supply chain map, visualizing the complex network of transportation routes and distribution centers.

クルーズ旅行は、観光地における経済活動を活性化し、地域経済の成長に貢献しています。具体的には、以下の様な効果が挙げられます。 

  • 観光消費の増加: クルーズ船の寄港地では、乗客による観光消費が見込めます。乗客は、現地の飲食店、土産物店、観光施設などを利用することで、地域経済に直接的な経済効果をもたらします。 
  • 雇用創出: クルーズ船の運航や寄港地での観光サービス提供には、多くの人材が必要です。クルーズ業界は、船員、旅行代理店スタッフ、観光ガイド、ホテル従業員など、様々な雇用を創出し、地域経済の活性化に貢献しています。 
  • 関連産業への波及効果: クルーズ船の運航は、運輸、物流、宿泊、飲食など、様々な関連産業に波及効果をもたらします。例えば、クルーズ船の燃料供給、食料調達、船舶の修理・メンテナンスなどが、地域経済に貢献します。 
  • 地域社会の発展: 経済成長は、地域社会の発展に不可欠な要素です。クルーズ業界は、地域経済に貢献することで、地域社会のインフラ整備、教育、医療などの向上に寄与することができます。 

寄港地観光では、地元産品や文化との交流が促進されることで、地域経済の活性化に繋がります。 しかし、クルーズ観光による経済効果は、地域に偏在する可能性があります。特定の観光地に集中する傾向があり、その恩恵を受けられない地域も存在します。 より地域全体に経済効果を波及させるためには、クルーズ会社と地域社会が協力し、観光ルートの開発や地域独自の観光資源の発掘など、多様な取り組みを進める必要があります。 

 

グリーンウォッシングへの懸念 

環境保護への意識が高まる一方で、一部では「グリーンウォッシング」の懸念も存在します。 これは、企業が実際よりも環境に配慮しているように見せかける行為を指します。クルーズ業界は、表面的な環境対策だけでなく、本質的な持続可能性への取り組みが求められています。

https://www.cruise-mag.com/cruisestory/19241/